ワシントン州有給病気休暇法: シアトル有給病気・安全休暇条例との比較

2018-01-01

2018年1月1日より、ワシントン州において有給病気休暇に関する法律(paid sick leave law)が施行されます。これにより、残業手当適用従業員(non-exempt employees)には、40時間の就労につき、1時間の有給病気休暇を取得する権利が与えられます。同法のポイントは、以下の表をご覧ください。なお、シアトル市では既に類似の有給病気・安全休暇(paid sick and paid safety time)に関する条例が施行されており、新州法との相違を比較する形式で掲載しております。同条例が適用される場合は、シアトル市条例に関する記述もあわせてご参照ください。

ワシントン州 シアトル市
雇用主区分・有給病気休暇の獲得条件等 ワシントン州 40時間の就労につき、最低1時間の有給病気休暇を獲得。
翌年繰越時間:40時間(それ以上認めても良い。)
シアトル市
雇用主規模 区分1 区分2 区分3
週平均FTE*数 雇用主規模 ~ 49 49 超~ 249 249 超~
獲得時間/勤務時間 雇用主規模 1H/40H 1H/40H 1H/30H
翌年繰越時間 雇用主規模 40H 56H 72(108**)H

*「FTE 」(full time equivalent) とは、フルタイム同等従業員。
「フルタイム同等」とは、以下の通り。
1) フルタイム従業員1人分の就労に見合う時間( 週40時間 、または雇用主が「フルタイム」と定める時間。例:週35時間を「フルタイム」と定める場合)。
2) 市内外双方の就労時間を含む。
3) 全従業員および派遣等に基づく労働者の就労時間を換算。
** 有給休暇(paid time off, PTO)提供の場合 、108時間。

使用目的 ワシントン州 1) 従業員またはその家族の身体または精神の健康のため。
2) 職場または子供が通う学校が衛生上閉鎖された場合。
3) DV、性的暴力、ストーカー行為にかかる事項のため。
シアトル市 1) 従業員またはその家族の身体または精神の健康のため 。
2) 職場または子供が通う学校が衛生または安全上閉鎖された場合。
3) DV、性的暴力、ストーカー行為にかかる事項のため。
残業手当非適用従業員(exempt)への適用の有無 ワシントン州 適用除外。 シアトル市 適用される。但し、週40時間を超える時間については、適用不要。
権利発生・獲得
算出の起算点
ワシントン州 雇用開始日。
但し、2018年1月1日以前から勤務する従業員は、2018年1月1日。
シアトル市 雇用開始日。
但し、2012年9月1日以前から勤務する従業員は、2012年9月1日。
使用開始日(最低) ワシントン州 雇用開始日から90日目。 シアトル市 雇用開始日から90日目。
再雇用の場合 ワシントン州 12ヶ月以内に再雇用された場合、前回雇用時の時間も換算される。再雇用時に、雇用主は従業員に対し、有給病気休暇獲得・ 未使用時間を提示する。 シアトル市 12ヶ月以内に再雇用された場合、前回雇用時の時間も換算される。
他の有給休暇との
共同提供
ワシントン州 他の休暇と合わせた統合的な有給休暇(PTO)について、書面による方針または団体協約があり、これを提供する場合は、それ以上の有給病気休暇の提供は不要。但し、次の条件を満たす必要がある。
1) 40時間の就労につき、最低1時間の休暇発生・獲得。
2) PTO休暇の支払額は、従業員の通常時間給に基づく。
3) 40時間以上残存する場合、最低40時間の翌年繰越許可。
4) 有給病気休暇のために使用可能なこと。
5) 従業員への通知および記録保管の遵守。
シアトル市 他の休暇と合わせた統合的な有給休暇(PTO)を提供する場合、次の条件を満たせば、それ以上の有給病気・安全休暇の提供は不要。
1) PTOは、有給病気・安全休暇と同じ目的および条件で使用可能。
2) PTOの発生起算点は、有給病気・安全休暇と同じ。
3) PTOの年間使用可能時間が、下表より短く設定されていないこと。
4) PTOの時間が発生・獲得したが、未使用の場合、翌年に繰り越される。但し、下表の時間を超える分の繰越許可は不要。

雇用主規模 区分1 区分2 区分3
年間使用可能時間
・翌年繰越時間
雇用主規模 40H 56H 108H
未使用分の取り扱い ワシントン州 金銭的対価の提供は不要。 シアトル市 金銭的対価の提供は不要。
休暇の前貸し ワシントン州 前貸し可能だが、必須ではない。 シアトル市 前貸し可能だが、必須ではない。
休暇取得の予見可能性と雇用主への合理的な通知の要求 ワシントン州 雇用主は、休暇取得の合理的な通知を、次の通り従業員に対して要求できる。
【健康・衛生または職場もしくは子供の学校等閉鎖に基づく場合】
1) 休暇取得が予見可能な場合、最低10日前の事前申請(但し、会社規則がこれより短い期間を定める場合はこの限りではない)、または速やかに事前に申請する。
2) 休暇取得が予見不可能な場合、勤務開始時間までに通知する。不可能な場合は、代理人に通知を依頼できる。
【DV、性的暴力、ストーカー行為に基づく場合】
1) 休暇取得が予見可能な場合、事前に従業員に提示した方針があれば、当該方針に従う。何ら方針がなければ、速やかに通知する。
2) 休暇取得が予見不可能且つ事前に通知できない場合は、休暇取得初日の終了までに、本人または代理人が通知する。
以上の合理的な通知を要求する場合、雇用主は事前に文書化した方針を作成し、または団体協約を締結して、これを従業員に通知する。
シアトル市 有給病気・安全休暇は、従業員の申請に基づき提供・取得される。
雇用主は、従業員の休暇取得に支障のない範囲で、会社規則に従い取得申請することを要求できる。休暇取得が予見可能な場合、最低10日間の書面による事前申請、または可能な限り速やかに事前に申請する。但し、会社規則がこれより短い期間を定める場合はこの限りではない。
休暇取得が予見不可能な場合、可能な限り速やかに、かつ雇用主の規則に従い申請する。
休暇取得の根拠
および証明
ワシントン州 3日を超えて休暇を取得する場合、雇用主は休暇取得の根拠を示す文書を要求できる。但し、病気の性質を説明した文書の要求は不可。
休暇取得がDV、性的暴力、ストーカー行為に基づく場合において、雇用主が証明の提示を要求する場合、従業員は速やかに、または緊急もしくは予見不可能な場合は、合理的な時間内に提供する。
雇用主が何ら証明を要求する場合、事前に文書化した方針を作成し、従業員に通知する 。その際、従業員に対し、証明の取得・提示に不合理な煩雑さまたは費用がかかる場合には、これらを主張することが可能なこともあわせて提示する。
休暇取得が健康または衛生による場合において、証明の提出を要求する場合、休暇取得から10日より短い日にちを設定してはならない。
シアトル市 3日を超えて休暇を取得する場合、雇用主は休暇取得の根拠を示す文書を要求できる。但し、病気の性質を説明した文書の要求は不可。
雇用主が休暇取得の根拠を示す文書を要求する際、当該要求により、従業員に不合理な負担または費用を課すことになってはならない。
発生・獲得時間、使用時間、残存時間の通知 ワシントン州 雇用主は従業員に対し、最低月次で、書面(例:給与明細)またはオンラインにより、①休暇発生・獲得時間、②使用時間、③残存時間を通知しなければならない。 雇用主は従業員に対し、毎回の賃金支払い時に、書面(例:給与明細、オンライン)により、①休暇発生・獲得時間、②使用時間、③残存時間を通知しなければならない。
秘密保持 ワシントン州 雇用主は、従業員が休暇取得に際して提供した身体・健康に関する情報を、秘密に保持する。 シアトル市 雇用主は、従業員が休暇取得に際して提供した情報を、秘密に保持する。但し、次の場合はこの限りではない。
1) 従業員の要求または同意に基づく場合
2) 裁判所命令または行政命令に基づく場合
3) 連邦法または州法に基づく場合
従業員への通知義務 ワシントン州 2018年1月1日以降に雇用する従業員に対しては雇用初日に、既存の従業員に対しては2018年3月1日までに、書面または電子的に、有給病気休暇の権利につき、次の内容を通知する。
1) 従業員の有給病気休暇取得の権利
2) 就労時間に対して取得する休暇の割合(例:40就労時間につき1時間)
3) 使用対象・目的
4) 従業員の正当な有給病気休暇の使用による雇用主の報復措置禁止
シアトル市 雇用主は従業員に対し、有給病気・安全休暇に関する雇用主の方針および手続きについて、書面により通知する。その内容は以下を含むが、これらに限定されない。
1) 従業員の有給病気・安全休暇取得の権利
2) 適用年の根拠(例:カレンダー年、雇用日基準、会計年度)
3) 雇用主の区分
4) 給与率(例:時給)
5) 年間可能使用時間および繰越時間
6) 休暇発生・獲得時間、使用時間、残存時間の従業員への通知方法
7) 従業員の雇用主に対する休暇取得に関する通知義務・方法
8) 従業員の正当な有給病気・安全休暇の使用による雇用主の報復措置禁止適用がある場合、以下も含む。
・有給病気・安全休暇の前貸しに関する規定
・3日を超えて休暇を取得する場合の根拠提示を要求する規定
・有給病気・安全休暇時間のシェア利用に関する規定
・PTOプログラム
その他 ワシントン州 【代替労働者要求の禁止】
雇用主は、従業員の休暇取得の条件として、代替労働者の確保を要求してはならない。
シアトル市 【猶予期間】
本条例は、区分1および区分2の雇用主に対し、州で適用される有給病気休暇よりも寛容な規定については、最初の従業員を雇用してから24ヶ月間は適用されない。
ご参考リンク ワシントン州 【ワシントン州労働産業省より】
有給病気休暇 – 概要:
https://lni.wa.gov/workers-rights/leave/paid-sick-leave/
書式・方針サンプル:
https://lni.us.engagementhq.com/PaidSickLeaveSamplePolicies
シアトル市 シアトル市より】
有給病気・安全休暇の概要:
http://www.seattle.gov/laborstandards/ordinances/
paid-sick-and-safe-time
有給病気・安全休暇 Q&A:
http://www.seattle.gov/Documents/Departments/
LaborStandards/OLS-QA-PSST.pdf
チェックリスト:
http://www.seattle.gov/Documents/Departments/
LaborStandards/PSST-Policy_Checklist-042216.pdf
方針サンプル(Word文書がダウンロードされます。):
https://www.seattle.gov/Documents/Departments/
LaborStandards/PSST-Sample_Policy.docx

免責条項: 本ページ含め、本ウェブサイトは、一般的な情報をご提供するものであり、法的アドバイスを提供するものではありません。本ウェブサイトのご利用・アクセスにより、依頼者様と弁護士の関係を構築するものではありません。当事務所は、本ウェブサイトに掲載する情報の正確性、妥当性等に関し、細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではなく、本ウェブサイトの利用によって、利用者等に何らかの損害が発生した場合でも、一切責任を負うものではありません。当サイトの利用にあたっては、利用者自身の責任において行っていただくようお願いいたします。なお、本ウェブサイトのコンテンツやアドレスは、予告なしに変更または削除されることがあります。また、本免責条項は、予告なく変更されることがあります。